人材業界に未経験で転職してもいい?中にいた僕が話す「きつさ」の正体
人と関わる仕事がしたくて人材業界を考えている。でも「きつい」「すぐ辞める」と聞いて、応募をためらっている営業・接客の方に向けた記事です。
先に結論です。
- 未経験の応募を公式に認めている会社があります。パーソルキャリアは営業経験がなくても「はい、可能です」と答え、「販売・サービス業等で店舗やサービスの売上げ向上に向けた取り組みをしてきた方なども」活躍していると公表しています
- 人材紹介(CA・RA)のきつさの正体は「売上は就職が決まったときにしか入らない」仕組みです。僕がいた新規開拓の営業では、長い労働時間と電話営業も重なりました
- 続く会社かどうかは、平均勤続年数と評価の仕組みを求人票・面接で確かめて選びます
根拠は、厚生労働省の集計と上場人材会社4社の有価証券報告書です。僕自身も人材メガベンチャーで法人営業をしていたので、そのとき見てきたことも書きます。
人材業界は伸びている?
伸びています。直近の年度は、国の集計でも民間の調査でも前の年より増えています(この先の予測ではありません)。
| 何の数字か | 数字 | 出どころ |
|---|---|---|
| 有料職業紹介事業の手数料収入 | 約9,835億円(前年度比17.6%増) | 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」 |
| 常用就職1件あたりの手数料 | 約103万円(同10.9%増) | 同上 |
| 就職件数(常用就職) | 888,993件(同5.3%増) | 同上 |
| 事業報告を提出した有料職業紹介事業所 | 30,561事業所(うち就職実績のあった事業所は13,946事業所) | 同上 |
| ホワイトカラー職種だけに絞った2024年度の人材紹介業市場規模(事業者売上高ベース) | 4,490億円(前年度比12.0%増) | 矢野経済研究所 |
この表は、こう読みます。
- 手数料収入 約9,835億円: 企業が人材紹介に払った手数料が、1年度で約9,835億円ある。金額の合計で、企業の数ではない
- 1件あたり 約103万円: 就職が1件決まると、企業から平均で約103万円の手数料が入る。逆に、決まらなければ入らない(次の「きつい」の見出しにつながります)
- 30,561事業所: 事業報告を出した「事業所」の数で、会社の数ではない(1社で複数の事業所を持つこともある)。うち就職実績のあった事業所は13,946事業所。応募先の会社の数とは読まず、続く会社を選ぶ目が要ると考えてください
未経験で応募できるかは、次の見出しで会社の公表から見ます。
未経験から入れる仕事は3つ
主な入口は、CA(キャリアアドバイザー)、RA(リクルーティングアドバイザー)、求人広告の営業の3つです。人材派遣の仕事は、この記事では扱いません。
| 職種 | 相手 | 仕事 |
|---|---|---|
| CA | 転職したい人 | 転職・就職やキャリア形成のサポート |
| RA | 採用したい企業 | 人材紹介サービスの法人営業。求人の獲得から選考のフォローまで |
| 求人広告の営業 | 採用したい企業 | 求人広告を売る法人営業 |
パーソルキャリアの資料では、RA は「顧客の“採用パートナー”であり“経営パートナー”」とされています。業務は「①採用ニーズをキャッチ・求人の獲得→②企業へのヒアリング→③求人情報の紹介→④広報・推薦→⑤各種選考のフォロー」の5ステップです。
未経験の応募を公式に認めている会社があります。 たとえばパーソルキャリアのよくある質問の答えはこうです。
- 営業経験が無い人: 「はい、可能です。販売・サービス業等で店舗やサービスの売上げ向上に向けた取り組みをしてきた方なども多く活躍しています」
- 人事やカウンセリングの経験が無い人(キャリアアドバイザー): 「はい、可能です」。知識は「研修や実務を通して学びながら」身につける前提です
パーソルキャリアでは、接客・販売の方も応募の対象に入ります。ほかの会社は、求人票の応募条件で確かめてください。あとは、いまの経験がどの入口に近いかを、自分の言葉で言えるかどうかです。
見本(数字は例): いまの経験を、どの入口に近いか言い換える
型: 『〈いまの仕事〉で〈誰の〉〈何を聞いて、何を提案して〉きた。人材業界の〈CA/RA/求人広告の営業〉の〈どの仕事〉に近い』
営業の人の見本
悪い例: 「人と関わる仕事がしたいので、人材業界を志望します」
- 足りないもの: どの仕事を受けるのかと、いまの経験のどこが近いのかが無い
良い例: 「法人のお客様に新規で電話をかけ、困りごとを聞いて提案してきました。企業の採用ニーズを聞いて求人をいただく RA の仕事に近いと考えています」
- 足したもの: 相手(法人)・工程(新規の電話→ヒアリング→提案)・近い職種(RA)
接客・販売の人の見本
悪い例: 「接客が好きなので、人を支える仕事がしたいです」
- 足りないもの: 「好き」で終わっていて、店頭で何をしてきたかが無い
良い例: 「店頭で、来店した方の用途と予算を聞いて、合う商品を選んで提案してきました。転職したい人の希望を聞いて求人を選ぶ CA の仕事に近いと考えています」
- 足したもの: 聞いてきたこと(用途と予算)と、近い職種(CA)
僕がいたのは、このどれとも少し違う入口でした。新卒向けのダイレクトリクルーティング(企業が学生にスカウトを送るサービス)の法人営業と、新卒の人材紹介の新規開拓営業です。
同じ会社に CA・RA もいて、たまに一緒に仕事をしていました。CA と RA の違いや、キャリアアドバイザーの入り方をもっと詳しく知りたい人は『キャリアアドバイザーに未経験でなれる?』にまとめています。
人材業界が「きつい」と言われるのはなぜ?
売上が、就職が決まったときにしか入らないからです。求人広告の営業は、この仕組みとは違います。
人材紹介の仕組みは、この3行です。
- 求職者は無料。採用した企業がエージェントに報酬を払うことで成り立つ
- 常用就職1件あたりの手数料は約103万円。つまり、就職が決まらなければ売上は入らない
- CA の目標も多くは売上。支援者数や内定承諾数を置くこともある
未経験で入った CA が最初につまずくのも、ここです。
- 求職者の内定が出ない、内定承諾が出ない
- 内定や承諾が出やすい求人はある程度決まっていて、その「当たり求人」を見つけられるかで成果が分かれる
僕がいちばんきつかったのは、労働時間の長さと、ひたすら続く電話営業でした。同じことを繰り返し、断られ、迷惑がられることが精神的にこたえました。
いまの営業で「断られ続けること」に削られているなら、ここは正直に考えてください。人材業界でも、特に新規開拓の営業では同じ種類のきつさがあります。
当てはまるか、数えてみてください。
- 断られた電話のことを、家に帰っても考えてしまう
- 同じ作業を繰り返す日が続くと、手が止まる
- 成果が出ないまま月末が近づく状態が、いちばんつらい
2つ以上当てはまるなら、応募の前に、求人票と面接で新規開拓の比重を確かめます。聞き方はこうです。
見本(数字は例): 新規開拓の比重を聞く質問
悪い例: 「テレアポはありますか?」
- 足りないもの: 「あります」で答えが終わる。どれくらいの比重かが分からない
良い例: 「入社して最初の3か月は、新規の企業への電話と、いまの取引先の対応が、だいたい何対何ですか?」
- 足したもの: 期間と割合。答えから、1日の中身が想像できる
大手の人材会社では、何歳の人が何年くらい働いている?
CA・RA が働く事業会社どうしなら、会社全体の平均勤続年数(CA・RA だけの数字ではない)はジェイエイシーリクルートメントが3.9年、エン・ジャパンが4年11ヶ月です。有価証券報告書の数字を並べます。
| 会社(提出会社の形) | 時点 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|---|---|
| ジェイエイシーリクルートメント(事業会社) | 2025年12月31日現在 | 2,002名 | 35.0歳 | 3.9年 | 8,159千円 |
| エン・ジャパン(事業会社) | 2026年3月31日現在 | 2,014名 | 31歳0ヶ月 | 4年11ヶ月 | 5,401千円 |
| パーソルホールディングス(持株会社) | 2025年3月31日現在 | 647名 | 40.9歳 | 6.2年 | 8,193,686円 |
| Visional(持株会社) | 2025年7月31日現在 | 116名 | 38.6歳 | 5.2年 | 8,613千円 |
読むときの注意は3つです。
- どれも「提出会社」の社員の数字です。 パーソルホールディングスと Visional は持株会社で、数字はグループ本社のスタッフのものです
- 持株会社の2社は、CA・RA が働く事業会社の数字ではありません。 Visional の連結従業員数は2,175名(うちHR Tech事業1,802名)あります
- 平均年間給与は、いまその会社で働いている人の平均です。 未経験で入った人の給与ではありません。入社時の給与は、求人票の提示額で見てください
見るべきは勤続年数です。ただ「何年なら長い」という線は、この数字だけでは引けません。
使い方は、応募先どうしを並べて比べることです。持株会社の2社の数字は、この物差しには入れません。
見本(数字は例): 応募先を並べるメモ
| 応募先 | 平均勤続年数 | どこで見たか | 面接で聞くこと |
|---|---|---|---|
| A社(上場の事業会社) | 4.5年 | 有価証券報告書 | 特になし |
| B社(上場の事業会社) | 2.8年 | 有価証券報告書 | 「B社より短めに見えますが、理由は何ですか?」 |
| C社(上場会社の子会社) | 載っていない | 親会社の数字は本社のもの | 「CA の方は、平均でどれくらい在籍していますか?」 |
求人票と面接で確かめる3つ
次の3つのうち2つ以上、求人票にも面接の答えにも出てこない会社は、慎重に見てください。
- 評価は何で決まるか。 売上だけか、ほかの項目もあるか。僕のいた会社は数字だけでなく、思考力・分析力・専門性などの項目ごとのコンピテンシー評価でした。パーソルキャリアは「6ヶ月毎に上長との評価ミーティング」があると公表しています
- 目標は何の数字か。 売上か、支援者数や内定承諾数か。未経験のうちに何を追うのかを聞きます
- 職種を変えられる制度があるか。 パーソルキャリアの「キャリアチャレンジ制度」は年2回で、累計異動者数は500名以上です。求人広告営業からキャリアアドバイザーへ異動した社員の例も載っています
資格の補助も見どころです。パーソルキャリアには、入社後に国家資格キャリアコンサルタントを取るときの補助があります。
見本(数字は例): 面接の最後に聞く質問
型: 『未経験で入った方は、〈いつまで〉に、〈どの数字・どの項目〉で評価されますか?』
悪い例: 「評価制度について教えてください」
- 足りないもの: 広すぎて、制度の説明だけが返ってくる
良い例: 「未経験で入った方は、最初の半年は売上、支援者数、内定承諾数のどれを目標に追いますか? 売上のほかに見る項目はありますか?」
- 足したもの: 期間と、どの数字か。答えで「売上だけで評価されるのか」が分かる
人材業界を辞めた人は、次にどこへ行く?
僕が見てきた範囲では、辞めた人の行き先はいろいろでした。
- 営業以外の仕事へのキャリアチェンジ
- よりホワイトで稼げる SaaS やコンサル
- ベンチャーへの転職や、起業
人材業界で身につくのは、企業が何を基準に人を採るかを知ることです。これは次の転職でそのまま効きます。
自分で職業紹介の事業所を開く道もあります。許可の基準の1つに、事業所ごとに置く職業紹介責任者の要件があります。
- 「成年に達した後3年以上の職業経験を有する者」であること
- 職業紹介責任者講習を修了していること(許可の場合は申請の受理日前5年以内の修了に限る)
これは責任者の要件で、許可の基準の全部ではありません。この2つを満たせば開業できる、という意味ではない点に注意してください。
出口を考えておくのは大事です。ただ面接では「この会社でまず何を身につけるか」から話します。
見本(数字は例): 「入社して、その先どうなりたいか」と聞かれたとき
型: 『まず〈この職種〉で〈身につけたいこと〉を覚えたい。その先は〈社内で広げたい方向〉』
悪い例: 「いずれは独立も考えています」
- 足りないもの: 入社してから何をするかが無い。すぐ辞めそうに聞こえる
良い例: 「まず CA として、企業がどんな基準で人を採るかを現場で覚えたいです。その先は企業側の仕事も経験して、採用する側と応募する側の両方が分かる人になりたいと考えています」
- 足したもの: 入社してから身につけること(採用の基準)と、社内での次の一歩
SaaS の会社の年収を知りたい人は『SaaS営業の年収は本当に高い?』で、上場SaaSの平均年収(その会社にいる人の平均)を並べています。
人材業界に移るなら、エージェントの仕組みを知っておく
転職エージェントを使うこと自体が、人材業界の職場見学になります。CA が何を考えて動いているかが、そのまま見えるからです。
CA は、紹介できる求人の中で「選考に通る可能性」「本人の希望」「紹介 fee」のバランスを見ながら求人を探しています。これは人材紹介の仕組みとして普通のことです。
うまく使うコツは2つあります。
- 悩んだまま選考に進まない。 「あなたと転職を進めたいので、協力してほしい」と伝えて、二人三脚で進める
- エージェントしか持っていない情報を聞く。 過去の候補者が何を質問され、どこを評価されて内定が出たか。人事や社員はどんな人か
見本(数字は例): 担当の CA に送る質問
悪い例: 「いい求人があれば紹介してください」
- 足りないもの: 何を基準に選んでほしいかが無い。希望が伝わらないまま求人が届く
良い例: 「人材業界の CA 職を考えています。この会社で過去の候補者は、面接で何を聞かれ、どこを評価されて内定が出ましたか? 人事の方はどんな人ですか?」
- 足したもの: 受けたい職種と、エージェントしか持っていない情報(過去の質問・評価された点・人事の人柄)
二人三脚で進められないほど信頼できない担当なら、エージェントを変えてください。人材業界を辞めた人の行き先にも SaaS がありました。人材業界と SaaS の営業を両方候補にしている人は、『おすすめの転職エージェント4社を比較【2026年】』で、どのエージェントに相談すればいいかを比べています。
今日からやること
今日できることは3つです。
- 職種を決める。 CA(人を支える)、RA(企業に売る)、求人広告の営業のどれを受けるか。いまの仕事で「断られ続けること」がつらいなら、新規開拓の比重も求人票で確かめます
- 応募する会社の勤続年数を調べて並べる。
- 応募先が2社以上なら同じ物差しで並べ、短い方には面接で理由を聞く
- 応募先が上場会社そのものなら、有価証券報告書に平均勤続年数がある
- 応募先が上場会社の子会社なら、親会社の有価証券報告書の数字は本社の数字で、応募先の数字ではない。その場合は面接で聞く
- 面接で聞く質問を3つ書き出す。 評価は何で決まるか、目標は何の数字か、職種を変える制度はあるか。上の見本の型に、応募先の名前を入れて書きます
人材業界以外の選択肢とも比べてから決めたい人は『未経験転職でおすすめの職種は?』で、7職種を求人倍率と給与で並べています。
